永瀬拓矢九段の苦悩
将棋のプロ棋士永瀬拓矢九段が、迷走しているのではないかと将棋ファンを心配させている。
そのきっかけとなったと言われているのは、2023年8月31日から行われたタイトル戦「第71期王座戦、対戦者:藤井聡太七冠(当時)」以降の対局である。
第71期王座戦は、2023年8月31日(木)から10月11日(水)までの日程で行われ、藤井七冠が永瀬九段を3勝1敗で破り、史上初の八冠制覇を成し遂げた。
デイリー新潮の記事は心配になる
2024年1月12日に配信された、デイリー新潮のインタビュー記事で、永瀬九段は「藤井さんに負けてから将棋へのモチベーションが…」と語った。
この発言に、ファンからは「弱気すぎる」「どうしたんだ永瀬」といった心配の声が聞こえるようになった。
対戦データはどうなっているか?
第71期王座戦より前と、それ以降の対局において永瀬九段の成績がどのように遷移しているかをまとめたので紹介します。
1月13日に行われた「第17回朝日杯将棋オープン戦」では、不利な状況から千日手に持ち込んで先手を取り勝つ(午前の対局、高見泰地七段)、責めないで守って勝つ(午後、豊島将之九段)というように本来の持ち味を出して2勝、ベスト4に進出しました。
第71期王座戦、第3局、第4局(迷走のきっかけ)
第71期王座戦は、永瀬王座(当時)と藤井七冠(当時)の「名誉王座 vs タイトル八冠全制覇」を賭けた熾烈な戦いでした。
初戦は永瀬王座が後手番ながら勝利しましたが、その後は藤井七冠が3連勝し、永瀬王座は名誉王座の資格を逃しました。
藤井七冠は、永瀬王座に勝利することで史上初のタイトル八冠全制覇を達成するというプレッシャーがあったため、はた目から見ると不調のように見えました。しかし、冷静に戦い続け、見事八冠全制覇を達成しました。
このタイトル戦は、将棋界の歴史に残る名勝負として語り継がれるでしょう。
第3局、4局は永瀬王座の勝率が95%越え
王座戦の第3局および第4局では、永瀬王座が藤井七冠を土俵際まで追い詰め、そのため逆転負けを喫したことが相当なショックとなったでしょう。
Abema AIの数値によれば、どちらの対戦も終盤で永瀬王座の勝率が95%を超えており、解説者たちは藤井七冠の逆転は難しいだろうと予測していました。しかし、藤井七冠がその予想を覆し、底力を見せつけた姿には驚きを禁じ得ません。
特に、第4局での永瀬王座が髪をかきむしる瞬間は感動的でした。
「名誉王座」という高いハードル
王座戦は、1953年(昭28)、一般棋戦として創設され、1983年タイトル戦に昇格した。
永瀬王座の今期の王座戦には5連覇がかかっていた。5連覇を達成すると、同時に永世称号である「名誉王座」の資格を得る。
名誉王座は王座を連続5期あるいは通算10期獲得することで得られるため、現在通算4期だった永瀬王座は、このチャンスを逃すとしばらく永世称号獲得のチャンスは回ってこないという状況にありました。
名誉王座の有資格者は、中原誠十六世名人と羽生善治九段の2人だけです。
2023年度永瀬拓矢九段の対戦データ
1月13日に行われた「第17回朝日杯将棋オープン戦」では、不利な状況から千日手に持ち込んで先手を取り勝つ(午前の対局、高見泰地七段)、責めないで守って勝つ(午後、豊島将之九段)というように本来の持ち味を出して2勝、ベスト4進出を決めました。
集計データを見ると、王座戦以降の勝率は落としているものの対局数を増やしているし、好不調の波はだれにでもあるものなので、誤差の範囲ではないかと思います。
区分 | ○ | ● | 勝率 | 集計期間 |
2023年度 | 25 | 18 | 0.581 | 2023/04/01~2024/01/13 |
王座戦前 | 11 | 6 | 0.647 | 2023/04/01~2023/08/23 |
王座戦以降 | 14 | 12 | 0.538 | 2023/08/31~2024/01/13 |
2023年度 永瀬九段の対戦成績
2023年10月11日に行われた王座戦第4局(決着局)の終盤の永瀬王座の振る舞いが印象的です。
直前の指し手がまずかったことに気がつき、頭をかきむしって悔しがる姿がAbema中継に映し出されました。それ以降の対局で黒星が増えているので、悔しさを昇華させるには日数が必要だったのではないかと思われる。
日付 | 曜 | 結果 | 先後 | 対戦相手 | 棋戦 |
2023/04/12 | 水 | ● | 後 | 羽生善治 | 第36期竜王戦 1組 ランキング戦 準決勝 |
2023/04/16 | 日 | ○ | 後 | 広瀬章人 | 第94期棋聖戦 本戦 2回戦 |
2023/04/20 | 木 | ○ | 後 | 佐々木勇気 | 第94期棋聖戦 本戦 準決勝 |
2023/04/24 | 月 | ● | 後 | 佐々木大地 | 第94期棋聖戦 本戦 決勝 |
2023/05/02 | 火 | ○ | 後 | 羽生善治 | 第64期王位戦 紅組 2回戦 |
2023/05/08 | 月 | ● | 後 | 石井健太郎 | 第64期王位戦 紅組 5回戦 |
2023/05/26 | 金 | ○ | 後 | 木村一基 | 第36期竜王戦 1組 3位決定戦 決勝 |
2023/06/22 | 木 | ● | 後 | 菅井竜也 | 第82期順位戦 A級 1回戦 |
2023/06/28 | 水 | ○ | 後 | 稲葉陽 | 第31期銀河戦 Eブロック 11回戦 |
2023/07/13 | 木 | ○ | 後 | 豊島将之 | 第36期竜王戦 本戦 準々決勝 |
2023/07/21 | 金 | ○ | 後 | 羽生善治 | 第36期竜王戦 本戦 準決勝 |
2023/07/27 | 木 | ○ | 先 | 佐藤天彦 | 第82期順位戦 A級 2回戦 |
2023/07/31 | 月 | ● | 後 | 伊藤匠 | 第36期竜王戦 挑戦者決定戦 第1局 |
2023/08/04 | 金 | ○ | 後 | 遠山雄亮 | 第49期棋王戦 本戦 2回戦 |
2023/08/14 | 月 | ● | 先 | 伊藤匠 | 第36期竜王戦 挑戦者決定戦 第2局 |
2023/08/19 | 土 | ○ | 先 | 山崎隆之 | 第44回日本シリーズ 本戦 2回戦 |
2023/08/23 | 水 | ○ | 先 | 野月浩貴 | 第31期銀河戦 決勝T 1回戦 |
2023/08/31 | 木 | ○ | 後 | 藤井聡太 | 第71期 王座戦1 |
2023/09/04 | 月 | ● | 後 | 菅井竜也 | 第49期棋王戦 本戦 3回戦 |
2023/09/08 | 金 | ○ | 先 | 斎藤慎太郎 | 第82期順位戦 A級 3回戦 |
2023/09/12 | 火 | ● | 先 | 藤井聡太 | 第71期 王座戦2 |
2023/09/19 | 火 | ○ | 先 | 本田奎 | 第65期王位戦 予選 2回戦 |
2023/09/21 | 木 | ○ | 後 | 阪口悟 | 第31期銀河戦 決勝T 2回戦 |
2023/09/27 | 水 | ● | 後 | 藤井聡太 | 第71期 王座戦3、勝率95%から大逆転負け |
2023/10/02 | 月 | ○ | 先 | 伊藤匠 | 第65期王位戦 予選 3回戦 |
2023/10/06 | 金 | ○ | 先 | 菅井竜也 | 第73期王将戦 挑戦者決定リーグ戦 2回戦 |
2023/10/11 | 水 | ● | 先 | 藤井聡太 | 第71期 王座戦4、勝率99%から大逆転負け |
2023/10/13 | 金 | ● | 後 | 丸山忠久 | 第31期銀河戦 決勝T 準決勝 |
2023/10/15 | 日 | ○ | 後 | 三浦弘行 | 第73回NHK杯戦 本戦 2回戦 |
2023/10/17 | 火 | ● | 後 | 豊島将之 | 第82期順位戦 A級 4回戦 |
2023/10/21 | 土 | ● | 先 | 藤井聡太 | 第44回JT杯 3回戦(準決勝) |
2023/10/24 | 火 | ○ | 後 | 渡辺明 | 第73期王将戦 挑戦者決定リーグ戦 3回戦 |
2023/10/27 | 金 | ○ | 後 | 豊島将之 | 第73期王将戦 挑戦者決定リーグ戦 4回戦 |
2023/11/03 | 金 | ○ | 先 | 近藤誠也 | 第73期王将戦 挑戦者決定リーグ戦 5回戦 |
2023/11/08 | 水 | ○ | 先 | 広瀬章人 | 第82期順位戦 A級 5回戦 |
2023/11/14 | 火 | ● | 後 | 羽生善治 | 第73期王将戦 挑戦者決定リーグ戦 6回戦 |
2023/11/22 | 水 | ● | 先 | 佐々木勇気 | 第73期王将戦 挑戦者決定リーグ戦 7回戦 |
2023/12/01 | 金 | ● | 後 | 山本博志 | 第65期王位戦 予選 4回戦 |
2023/12/13 | 水 | ● | 先 | 佐藤康光 | 第37期竜王戦 1組 ランキング戦 2回戦 |
2023/12/19 | 火 | ○ | 先 | 渡辺明 | 第82期順位戦 A級 6回戦 |
2024/01/11 | 木 | ● | 後 | 稲葉陽 | 第82期順位戦 A級 7回戦 |
2024/01/13 | 土 | ○ | 先 | 高見泰地 | 第17回朝日杯 本戦 1回戦、千日手指直し |
2024/01/13 | 土 | ○ | 先 | 豊島将之 | 第17回朝日杯 本戦 2回戦 |
藤井八冠にとっての特別なライバル
藤井八冠にとって永瀬九段は、唯一のVS相手であると同時に特別なライバルであります。VSとは1対1で研究会(真剣勝負の練習将棋)を行うことを言います。
永瀬九段は藤井八冠より10歳年長ですが、藤井八冠が14歳でデビューして以来、永瀬九段からVS相手をお願いし現在に至ります。藤井八冠が高校を中退するまでの間は、永瀬九段が愛知県瀬戸市に出向きVSを行っていました。
永瀬九段は年齢を超えて藤井聡太という棋士を尊敬しており、藤井愛を隠すことをしません。
デイリー新潮のインタビュー記事
永瀬九段は、王将リーグで連敗、A級順位戦の挑戦者争いで2敗目を喫するなど、王座戦以降の対局が芳しくありません。そのような状態の時にデイリー新潮からインタビューを受けました。
まとめ
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