
第84期名人戦・順位戦 (2025年度、令和7年度)
2026年3月10日、第84期名人戦・順位戦C級2組の一斉対局が終了し、今期の順位戦における全棋士の昇級・降級が出揃いました。
今期の最大のトピックは、A級プレーオフを制した糸谷哲郎八段による、藤井聡太名人への挑戦権獲得です。糸谷八段は永瀬拓矢九段との激闘を制し、自身初となる名人戦七番勝負の舞台に立ちます。
現在37歳の糸谷八段は、2025年6月より日本将棋連盟の常務理事を務めています。A級棋士として最前線で対局をこなしつつ、運営側として対局環境の整備や普及活動に奔走する「二刀流」を体現。現職理事による名人挑戦は、1986年の米長邦雄九段以来、実に40年ぶりの快挙となりました。
糸谷八段といえば、かつてテレビ番組で「引退までに、藤井さんに一度くらいは勝ちたい」と控えめに語ったエピソードが知られています。しかし、その言葉とは裏腹に、2025年2月25日の第10期叡王戦本戦準決勝では、ついに藤井聡太竜王・名人から念願の初勝利を挙げました。勢いそのままに名人の牙城へ挑む今シリーズ、どのような戦いを見せてくれるのか注目が集まります。
第84期順位戦 リーグ別トピック
【A級】二刀流・糸谷八段の快挙と、世代交代の足音
今期のA級は、近年にない大混戦となりました。その頂点に立ったのは、日本将棋連盟常務理事を務める糸谷哲郎八段です。永瀬拓矢九段とのプレーオフを制し、40年ぶりとなる「現職理事による名人挑戦」を決めました。
一方で、負傷が原因とは言え、長年トップ戦線を維持してきた渡辺明九段が降級を喫するなど、最高峰の舞台における勢力図の激変を印象づける結末となりました。渡辺九段にとって今回が2度目のA級陥落となります。前回はスキャンダルを乗り越え、わずか一期でA級復帰を果たしました。今回も同様に早期復帰を果たせるのか、その行方が注目されます。
| 棋士名 | 段位 | 年齢 | 勝敗 | 区分 | 備考 |
| 糸谷 哲郎 | 八段 | 37歳 | 7勝2敗 | 挑戦 | プレーオフ勝利 |
| 永瀬 拓矢 | 九段 | 33歳 | 7勝2敗 | 残留 | プレーオフ敗退 |
| 中村 太地 | 八段 | 37歳 | 2勝7敗 | 降級 | |
| 渡辺 明 | 九段 | 41歳 | 1勝8敗 | 降級 |

藤井聡太との死闘が残したもの──タイトル戦はトップ棋士の試金石
藤井聡太は八冠を達成し、将棋界に大きな影響を与えた。本稿では彼と対局した棋士の成績や心理的変化を分析し、特に対局後に調子を崩す傾向に注目する。
【B級1組】「藤井世代」伊藤二冠の独走と、広瀬九段の矜持
A級復帰を目指す実力者が集うB級1組では、広瀬章人九段が格の違いを見せつけ、11勝1敗という圧倒的な成績で首位通過を果たしました。
そして最大の注目は、「藤井を泣かした男」から、今や「藤井から二冠を奪取した男」へと進化を遂げた伊藤匠二冠の快進撃です。10勝2敗という好成績で「3期連続昇級」の快挙を成し遂げ、ついに最上位のA級への切符を手にしました。
一方で、これら若手の猛追に押される形で、実績ある棋士たちが残留争いに巻き込まれるなど、B級1組特有の過酷な過密日程が浮き彫りとなった期でもありました。
| 棋士名 | 段位 | 年齢 | 勝敗 | 区分 | 備考 |
| 広瀬 章人 | 九段 | 39歳 | 11勝1敗 | 昇級 | A級復帰 |
| 伊藤 匠 | 二冠 | 23歳 | 10勝2敗 | 昇級 | 3期連続昇級 |
| 青嶋 未来 | 七段 | 31歳 | 4勝8敗 | 降級 | |
| 石井 健太郎 | 七段 | 33歳 | 3勝9敗 | 降級 | |
| 高見 泰地 | 七段 | 32歳 | 3勝9敗 | 降級 |
【B級2組】ベテランの意地と若手の躍進
B級2組では、ベテラン勢が圧倒的な強さを見せました。山崎隆之九段と久保利明九段が揃って9勝1敗という極めて高い勝率を挙げ、クラスを牽引。
その厚い壁に挑んだ若手エースの藤本渚七段も、激戦を勝ち抜き8勝2敗の成績で3期連続昇級を達成しました。実力者たちが一歩も引かないハイレベルな昇級争いは、今期の順位戦を象徴する光景となりました。
| 棋士名 | 段位 | 年齢 | 勝敗 | 区分 | 備考 |
| 山崎 隆之 | 九段 | 45歳 | 9勝1敗 | 昇級 | B級1組復帰 |
| 久保 利明 | 九段 | 50歳 | 9勝1敗 | 昇級 | B級1組復帰 |
| 藤本 渚 | 七段 | 20歳 | 8勝2敗 | 昇級 | 3期連続昇級 |
| 藤井 猛 | 九段 | 55歳 | 4勝6敗 | 降級 | |
| 鈴木 大介 | 九段 | 51歳 | 4勝6敗 | 降級 |
【C級1組】混戦を断った「9勝1敗」の壁
C級1組は、最終局まで昇級の行方が分からない大激戦となりました。結果、都成竜馬七段、西田拓也六段、岡部怜央五段の3名が、熾烈な星の潰し合いの中で9勝1敗という好成績を収め、B級2組への切符を掴み取りました。厚い選手層の中で、安定した指し回しを見せた者が最後に笑う結果となっています。
| 棋士名 | 段位 | 年齢 | 勝敗 | 区分 | 備考 |
| 都成 竜馬 | 七段 | 36歳 | 9勝1敗 | 昇級 | |
| 西田 拓也 | 六段 | 34歳 | 9勝1敗 | 昇級 | |
| 岡部 怜央 | 五段 | 26歳 | 9勝1敗 | 昇級 | |
| 畠山 成幸 | 八段 | 56歳 | 1勝9敗 | 降級 | |
| 中村 修 | 九段 | 63歳 | 1勝9敗 | 降級 |
【C級2組】佐々木大地七段、悲願の昇級
50名以上がひしめく「地獄」のC級2組は、最終戦までもつれる大混戦となりました。その中で、髙野智史六段、黒沢怜生六段が9勝1敗の成績で昇級。
注目を集めた昇級争いの最終枠には、勝負強さを見せた佐々木大地七段が滑り込み、ついにC級1組への切符を手にしました。一方で、若手の宮嶋健太四段は好成績を収めながらも、順位の差に泣き昇級を逃す結果となりました。
| 棋士名 | 段位 | 年齢 | 勝敗 | 区分 | 備考 |
| 高野 智史 | 六段 | 32歳 | 9勝1敗 | 昇級 | |
| 黒沢 怜生 | 六段 | 34歳 | 9勝1敗 | 昇級 | |
| 佐々木 大地 | 七段 | 30歳 | 8勝2敗 | 昇級 | 悲願の昇級 |
ザックリまとめると
- 糸谷哲郎八段の名人挑戦(理事との二刀流)
- 伊藤匠二冠の3期連続昇級
- 若手代表としての藤本渚七段の躍進
- あがレンジャーを卒業した佐々木大地七段
まとめ


今期の順位戦を振り返ると、まさに「世代交代の荒波」と「ベテランの意地」が交錯した激動の1年だったと感じます。
なかでも、運営の重責を担いながら名人挑戦という高みに到達した糸谷哲郎八段の姿は、多くのファンに勇気を与えたのではないでしょうか。かつて語った「一度くらいは勝ちたい」という言葉の裏に秘められた、トップ棋士としての凄まじい執念を感じずにはいられません。
また、伊藤匠二冠や藤本渚七段といった若手実力者が、期待を裏切ることなく上へと駆け上がっていくスピード感にも圧倒されました。彼らが上のクラスでどのような化学反応を起こすのか、既に来期の開幕が待ちきれません。
昇級を決めた棋士の皆様、おめでとうございます。そして降級となった棋士の皆様の、新天地での巻き返しも心より応援しています。
皆さんは、今期どの対局が最も印象に残りましたか?ぜひコメント欄で感想を教えてください!
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