
棋士編入試験 /2024年9月~1月
西山朋佳女流三冠(白玲・女王・女流王将、にしやまともか)が挑戦した「棋士編入試験」で、最終対局となる2025年1月22日の柵木幹太四段との試合に敗北し、不合格となりました。
女流三冠という実績を持つ彼女でしたが、棋士になることはできませんでした。棋士へのハードルの高さが改めて浮き彫りになりました。
柵木幹太四段(ませぎかんた)
対局相手の柵木幹太四段は、奨励会三段リーグ時代に西山女流三冠と切磋琢磨した元同僚であり、現在はフリークラスの棋士です。奨励会三段リーグを卒業できなかった西山女流三冠と、フリークラスに編入された柵木四段の間には、大きな壁があることが示されました。
西山女流三冠に対する期待が非常に高まる中での挑戦でしたが、史上初の女性棋士誕生は実現しませんでした。
「女性棋士」と「女流棋士」は同じように見えますが、実は全く異なります。「女性棋士」は日本将棋連盟史上、まだ一人も誕生していません。本文で詳しく説明します。
棋士とは?

将棋の棋士とは、プロとして将棋を指す資格を持つ人のことを指します。日本においては、主に日本将棋連盟に所属し、公式の棋戦に参加できる資格を持つ人を指します。男女の区別のない全くの平等な資格です。
女流棋士
「女流棋士」は、女性限定のプロ制度で、日本将棋連盟の女流棋士規定に基づく資格を持つ人を指します。
2007年に日本将棋連盟から独立したLPSA(日本女子プロ将棋協会)所属の女流棋士も「女流棋士」ですが、日本将棋連盟(JSA)所属の女流棋士とは区別されることがあります。例えば、日本将棋連盟の公式戦には基本的に参加できません(一部例外あり)
先細りのLPSA
LPSA設立当初は、日本将棋連盟との関係がやや対立的でしたが、現在はある程度協力関係もあります。一部の女流棋士はLPSAを退会し、日本将棋連盟へ復帰した例もあります。
LPSA所属の女性プロ棋士は「女流棋士」ですが、日本将棋連盟の公式戦やタイトル戦に参加できるかは双方協議の上決められています。
日本将棋連盟の運営に不満を持つ女流棋士が脱退して作ったのがLPSAであり、その存在意義を考えると、日本将棋連盟主催の棋戦にただ乗りするのは虫が良すぎると考える将棋ファンの気持ちは理解できます。
元同僚と最終試験に臨んだ

西山朋佳女流三冠は、奨励会三段リーグで棋士を目指していましたが、様々な理由から女流棋士に転向し、現在は女流タイトルを複数保持しています。一方、柵木四段は、奨励会三段リーグで2度の次点という成績を残し、フリークラスに編入されました。
フリークラスは、順位戦リーグへの昇級を目指す棋士のための制度であり、10年の在籍期間中に順位戦リーグC2クラスへ昇格できなければ引退となります。両者の経歴は異なるものの、棋士になるという目標に向かって努力してきた点は共通しています。
なお、西山女流三冠は、2021年4月1日に女流棋士(三段)に転向しています。2019年から20年にかけて行われた第66回奨励会三段リーグ戦で14勝4敗の3位だったため、プロ入りを逃していました。
棋士編入試験 スケジュール

西山女流三冠の挑戦結果
3勝で合格、3敗で不合格。合格すると棋士(フリークラス四段)への編入資格を得ます。対局の持ち時間は3時間。第1局は振駒で第2局以降は1局ごとに手番を交代します。
試験官 | 試験日(10時~) | 試験会場 | 勝敗 | 先後 | |
1 | 高橋佑二郎 四段 | 9月10日(火) | 東京将棋会館 | ○ | 後 |
2 | 山川泰熙 四段 | 10月2日(水) | 東京将棋会館 | ● | 先 |
3 | 上野裕寿 四段 | 11月8日(金) | 関西将棋会館 | ● | 後 |
4 | 宮嶋健太 四段 | 12月17日(火) | 関西将棋会館 | ○ | 先 |
5 | 柵木幹太 四段 | 1月22日(水) | 関西将棋会館 | ● | 後 |
図解:日本将棋連盟 棋士のヒエラルキー

女流棋士と棋士は、それぞれ異なる制度のもとで活動しています。棋士になるためには、日本将棋連盟の奨励会三段リーグで上位の成績を収めて四段に昇段するか、一定の条件を満たした上で棋士編入試験に合格し、フリークラス四段として編入する方法があります。
フリークラス四段は、順位戦に参加できないため収入が不安定になる。また、10年の在籍期間に順位戦C2クラスへ昇級できなければ引退となる。
棋士になるための道のり
- 奨励会に入会(通常は6級からスタート)
- 三段リーグを勝ち抜き、四段昇段(プロ入り)
- 三段リーグで次点を2回取りフリークラス四段に昇段(佐々木大地七段、柵木幹太四段など)
- 棋士編入試験に合格しフリークラス四段に昇段(瀬川晶司六段、今泉健司五段、折田翔吾五段、小山怜央四段)
瀬川晶司氏のプロ編入が認められたことをきっかけに、現在の「棋士編入試験制度」が整備された。
- 棋戦に参加し、昇進・タイトル獲得を目指す
- 順位戦C2クラスからフリークラスに降級すると、65歳で引退となる(降級しなければ引退を免れる)
女流という特別枠
一方で、女性が女流棋士になるためには別の基準が設けられています。
日本将棋連盟は、「奨励会2級以上で退会の場合は、退会時の段級位でそのまま女流棋士の資格を得る」と規定しています。(記事)
西山朋佳女流三冠は、奨励会三段リーグで奮闘したものの三段リーグを退会し、女流棋士三段の資格を取得しました。この制度により、奨励会で一定以上の実力を持つ女性が女流棋士として活動する道が開かれています。
しかし、この制度は男性には適用されないため、「公平性に欠けるのではないか」という指摘も一部からあります。つまり、女流棋士は奨励会会員以下の実力であっても女流プロ資格を得ることが可能であり、女流だけのタイトル戦に出場して賞金を稼ぐことができます。この点が議論を呼ぶことがあります。
果てしなく遠い名人への道
名人戦を例にとると、順位戦リーグに所属してA級まで駆け上り、さらにA級リーグで優勝して初めて藤井名人に挑戦することができるのです。四段に昇段して最短で5年必要です。藤井名人は6年かかりました。生涯を通じてC級2組から昇級せずに引退する棋士もおられます。
順位戦リーグに所属すると、各ランクに応じて参稼報酬(給料みたいなもの)が支給されます。名人で月100万、A級80万と言われています。フリークラスに降級すると参稼報酬がなくなるため大幅な収入ダウンとなります。
*奨励会以下はアマチュアです。(プロとして活動する資格のない将棋愛好家)
*女流は奨励会以下の実力のため順位戦リーグの棋士と対戦するのは違和感がある

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まとめ


【衝撃】西山朋佳女流三冠、棋士編入試験敗退!女性棋士誕生の夢遠ざかる
2024年9月から開催されていた「棋士編入試験」に挑戦した西山朋佳女流三冠(白玲・女王・女流王将)は、最終対局となる2025年1月22日の柵木幹太四段との試合で敗れ、不合格となりました。この結果、女流棋士として数々のタイトルを持つ西山三冠でも、棋士になるための壁が非常に高いことが改めて明らかになりました。
最終試験の相手となった柵木幹太四段は、奨励会三段リーグ時代に西山女流三冠と切磋琢磨した間柄ですが、その後、次点2回の規定をクリアして奨励会を卒業しフリークラス棋士となった実績を持ちます。一方、西山三冠は奨励会三段リーグを卒業できなかった経緯があり、結果として両者の実力差が浮き彫りとなりました。
史上初の女性棋士誕生に対する期待が高まる中での挑戦でしたが、その期待に応えることは叶いませんでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。女流棋士と棋士の違いについての考察は次の投稿が詳しいです。

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