
はじめに
Webサイトのアクセス解析やデバイス判定において、User-Agent(UA)は長年重要な役割を担ってきました。しかし近年、プライバシー保護の観点から仕様が大きく変わりつつあります。
特に2026年現在では、Chromeを中心にUser-Agentの情報は簡略化され、代わりに「Client Hints(UA-CH)」の利用が推奨されています。
本記事では、2026年3月時点の最新User-Agentを整理するとともに、従来のUAの限界と、今後必須となるUA-CHについて解説します。
UA-CH /User-Agent Client Hints、簡素化されたUA
UAは、送信する情報を簡素化してプライバシーに配慮した「UA-CH」へ移行する過程にあり、その機能はChromeに実装されています。
UA-CHは記述時点ではオプション扱いのため、ChromeはデフォルトではUAを送信します。
調査結果(最新UA一覧表)
2026年3月18日現在の主要ブラウザにおけるUA文字列は以下の通りです。
※ Chromium系(Chrome/Edge/Brave)は、プライバシー保護のためマイナーバージョンを「.0.0.0」に、Android OSバージョンを「10」に、macOSバージョンを「10_15_7」に固定しています。
※ Brave (Desktop) は識別を困難にするため、Chromeと完全に同一のUAを送信します。判定には Client Hints (UA-CH) が必要です。
| カテゴリ / ブラウザ | OS環境 | User-Agent 文字列 (代表例) |
| Google Chrome 146 | Windows 11 | Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/146.0.0.0 Safari/537.36 |
| Microsoft Edge 146 | Windows 11 | Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/146.0.0.0 Safari/537.36 Edg/146.0.3856.62 |
| Brave (Desktop) | Windows / macOS | Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/146.0.0.0 Safari/537.36
Braveのデスクトップ版は、意図的に Google Chromeと全く同じ文字列 を返します。これは、Braveであることを隠して統計上の「その他」に分類されるのを防ぎ、ウェブサイトから差別的な扱いを受けないようにするためです。 |
| Mozilla Firefox 148 | Windows 10/11 | Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64; rv:148.0) Gecko/20100101 Firefox/148.0 |
| Chrome (Mobile) | Android 15/16 | Mozilla/5.0 (Linux; Android 10; K) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/146.0.0.0 Mobile Safari/537.36 |
| Safari (iOS 18.7) | iPhone (iOS) | Mozilla/5.0 (iPhone; CPU iPhone OS 18_7 like Mac OS X) AppleWebKit/605.1.15 (KHTML, like Gecko) Version/18.7 Mobile/15E148 Safari/604.1 |
| Brave (iOS) | iPhone (iOS) | Mozilla/5.0 (iPhone; CPU iPhone OS 18_7 like Mac OS X) AppleWebKit/605.1.15 (KHTML, like Gecko) Version/18.7 Mobile/15E148 Safari/604.1 Brave/1.88
Appleの規定により全ブラウザがWebKitエンジンを使用するため、Safariに近い文字列になりますが、iOS版Braveは識別子を含める仕様になっています。 |
| Google Chrome | macOS 15 | Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_15_7) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/146.0.0.0 Safari/537.36 |
留意事項
詳細なデバイス情報(正確な OS バージョンやモデル名)を取得したい場合は、UA 文字列ではなく User-Agent Client Hints (UA-CH) API を使用するのが現在の推奨手法です。
- User-Agent Reduction:
Google ChromeやMicrosoft EdgeなどのChromium系ブラウザでは、フィンガープリントによる追跡を防止するため、UA文字列に含まれる詳細情報を削減(Reduction)し、代わりに User-Agent Client Hints (UA-CH) APIでの情報取得を推奨しています。
- バージョン番号:
2026年3月の最新安定版に基づいた数値(Chrome 146 / Firefox 148)を記載していますが、OSのマイナーアップデートやブラウザのパッチ適用により、細かなリビジョン番号は日々変動します。
Android 版 UA に関する補足事項
Android 環境では、プライバシー保護のための User-Agent Reduction(削減) が特に顕著に進んでいます。以下の点にご注意ください。
- OSバージョンの固定:
実際のデバイスが Android 15 や 16 であっても、互換性とプライバシーのために UA 文字列上は Android 10 と表示されるのが標準仕様となっています。
- プラットフォームの隠蔽:
デバイスモデル名(例: Pixel 9 Pro)は UA 文字列から削除され、代わりに汎用的な K という識別子が使われるようになっています。
- Mobile / Tablet の識別:
スマートフォン(Mobile)の場合は Mobile Safari となり、タブレットの場合は Mobile という単語が抜け、単に Safari と表記されます。
Chrome / Edge / Brave 比較表
| 項目 | Chrome | Edge | Brave |
| エンジン | Chromium | Chromium | Chromium |
| UAの違い | Chrome/146 | Chrome/146 + Edg/146 | Chrome/146(完全同一) |
| 識別可否 | 可能 | 可能(Edgで判別) | 不可(UAでは判別不能) |
| 特徴 | 標準ブラウザ | Microsoft最適化 | 広告ブロック・プライバシー重視 |
| 解析上の扱い | Chrome | Edge | Chromeとしてカウント |
UA文字列だけではデスクトップ版のBraveをChromeと区別することは困難です。現在のウェブ開発でBraveを判定するには、以下の User-Agent Client Hints (UA-CH) を確認するのが標準的です。
- Sec-CH-UA: "Chromium";v="146", "Brave";v="146", "Not-A.Brand";v="99"
- JavaScriptでの取得: navigator.userAgentData.brands を実行すると、配列の中に brand: "Brave" が含まれていることで判別可能です。
User-AgentとUA-CH(Client Hints)
従来のUser-Agentの問題点
従来のUAには以下の課題があります。このため、主要ブラウザはUAの簡略化を進めています。
- 情報量が多すぎる(フィンガープリント問題)
- 偽装が容易
- 正確なブラウザ判定が困難(例:Brave)
UA-CH(Client Hints)とは
UA-CHは、必要な情報だけをサーバーに提供する新しい仕組みです。
- 必要な情報のみ取得可能
- プライバシー保護に配慮
- ブラウザ識別精度が向上
UA文字列が「削減」された現在、ブラウザの正確な情報を取得するには User-Agent Client Hints (UA-CH) の活用が不可欠です。
特に、Windows 10と11の判別や、Braveブラウザの特定は、従来のUA文字列では不可能です。以下のJavaScript実装例のように、非同期で「高エントロピー情報」をリクエストする必要があります。
![[UA-CH] Chrome v101の User-Agent Client Hints 休眠中!?](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjZYam1be9D9srCTDb-K_cwcxtPEX5oxuNHjYIh_UGIn_VLS6Po9hQ-Jbfp1w1OLycVqXtWmoqXE8bzXR3zyW46liQmC9YnAn3-LoPOD89kbYHtEJ1AB_hWTjWjEQeBbCTXY3SrCwbmrV4B/w1200-h630-p-k-no-nu/PC_programming.png)
[UA-CH] Chrome v101の User-Agent Client Hints 休眠中!?
[User-Agent Client Hints: UA-CH] Chrome 84 ベータ版以降に実装された。 Chrome 100がUser-Agentを使用する最後のバージョンと聞いたことがあるが、ガセだった!? Chrome 101 はUA-CHは [Disabled] のため...
User-Agent Switcher
ブラウザ拡張 User-Agent Switcher for Chrome はUAを偽装するためのツールです。これはGoogleがリリースしているものなので怪しいものではない。
モバイル限定コンテンツは、UAを偽装することでデスクトップから閲覧可能になる。
ドメイン毎に自動的にUser-Agentを変更することができる。

User-Agent Switcher for Chrome、ユーザーエージェント、2021-10-26
User-Agentを変更することができるChrome拡張機能。 Google純正のため安心して利用できる。 プリセットされた既定値は古いので、そのまま使用すると怪しまれる可能性大。
まとめ


今回の調査を通じて、改めて「User-Agentに頼り切った判定」のリスクが浮き彫りになりました。特にBraveのようにプライバシーを重視するブラウザは、UA文字列上では完全に「Chrome」として振る舞います。
今後はUA文字列を補助的なものと捉え、Client HintsやFeature Detection(機能検知)を組み合わせた柔軟な設計が、Web開発者やアナリストにとってのスタンダードとなるでしょう。本記事のデータが、皆様のログ解析やシステム改修の参考になれば幸いです。
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