[藤井七冠] レベルが上がったら次のレベルが出てくるのでタイトルは実力の尺度ではない

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AI対プロ棋士

令和5年版将棋年鑑

将棋情報局に掲載された「細かすぎて伝わらない!『令和5年版将棋年鑑』藤井聡太インタビューの微妙なニュアンスの補足」を拝見させていただきました。

「令和5年版将棋年鑑」発刊にあたり、マイナビ出版将棋書籍編集長島田修二氏が内容を補完するために藤井聡太七冠にインタビューを敢行した内容が書かれていました。

インタビューでは、我々が疑問に思っていることがいくつか解明されています。

例えば、

  • 角換わり腰掛け銀は同じように見えるが実は違う
  • 六冠(インタビュー当時)を獲得したのに「実力が足りない」と考える根拠
  • タイトル獲得数に対する考え方
  • AI研究に対する捉え方 (大変だとは思っていない)
  • 定跡を作成する意味
  • 対局中に「ガックシ」と頭を垂れる時の心情
  • ネクタイは誰の好みか?
  • ...など


藤井七冠は正直者だなぁー

AI対プロ棋士

「細かすぎて伝わらない!『令和5年版将棋年鑑』藤井聡太インタビューの微妙なニュアンスの補足」から気になった部分を引用させていただきました。原文は文末のリンクから辿ることができます。

インタビュー当時は名人を獲得する前だったので、藤井六冠と表現されています。

個人的には「生まれ変わっても人間になりたい。自然界は競争が厳しいので生き残る自信がない。」が印象的でした。

将棋情報局 2023.06.15~07.19
質問藤井聡太七冠
自分の将棋のどんな部分を見てほしいですか?先手番で角換わり腰掛け銀を指しているので序盤は同じ手順が多いように見えるかもしれませんが、細かな工夫をしています。

中終盤では、お互いの玉の距離感をどのように見ているかに注目してください。

どのように観ればいいでしょうか?「お互いの玉形を見たうえで、攻めていくか、自陣に手を入れるか、どのタイミングで攻め合いに出るか、といったところでしょうか。」
六冠を獲得しても「実力が足りない状態」とはどのような意味ですか?

「理想から見てどれくらい足りないということではなく、次のレベルから見たら足りないということです。レベルが上がったらさらに次のレベルが出てくるというイメージです。」

実力の尺度としてタイトル数はあまり関係ないのですね。「はい。そうですね」
相居飛車の場合、同じ戦法を先手でも後手でも指すことになるのでその中で先手番の研究と後手番の研究を並行して行う感じになるのでしょうか?「はい、定跡を考えるというのは先後どちらの立場でも有力な手を考えるということなので、どちらかをよくしようという意識はないです。」

「特に角換わりなどはシンプルに『定跡を考えている』という側面が強いです」

AIが登場したことで研究が大変になったと感じますか?「自分の場合、一局ごとに作戦を立てるということはしていないので大変ということはないです。」
常に満遍なく定跡を考えている、ということでしょうか。「そうですね。直近の対局にそれほど関係なく定跡の作成と更新をしているという感じです」
定跡の作成と更新というすごく大変な作業ことをしているのに、藤井先生が大変だと思っていないだけということではないですか?「作戦の意図というか趣旨を生かすにはある程度深い理解が必要なので、毎回違う作戦をしようと思うとそこでの大変さは出てくると思います。」

「自分の場合は定跡作成は実戦で有利に立つためにやっているということではないので、そこは負担ということはないです。」

幅広い戦型で定跡を作成しているのですか?「そうですね。ただ、これまでも定跡作成をやってきたので、部分的に見直すことはあっても一遍に全部変えるということはありません。なのでそこに特に比重を置いているということはないです。」
実戦で藤井先生の定跡の範囲より相手の研究の方が少し先まで行き届いていた場合は、若干指しにくいということになるのでしょうか?

「後手番であれば定跡を抜けた局面が互角であれば仕方ないので、相手の研究が深くてもある程度受け入れることになると思います。」

定跡を抜けた後の形勢が問題だと?「あらかじめ相手より深く研究しようと思っても、それはやってみなければわからないというか、相手が何を指してくるかはわからないので、想定しても仕方ないのかなと。」

「自分は自分で定跡を作っておいて、そこを抜けたらあとは考えればいいと思っています。」

広瀬先生の自戦記に1日目の夜はやることがなくてテレビでバレーボールと見ていたと書かれていました。藤井先生も1日目の夜にテレビを見ることはありますか?「これまではニュースを見ることが多かったんですけど、王将戦のときはテレビで王将戦が取り上げられていたのでその手が使えなくなりました」
テレビのニュースで将棋が出るなんて数年前では考えられなかったですね。「そうですね。大変ありがたいことではあるんですけど、ただ、その時はしびれました(笑)」
第5局では藤井先生ががっくりとうなだれているのを見て、広瀬先生が自分が勝っていることを確信した、と自戦記にありました。がっくりするのは相手に情報を与えるデメリットもあるのかなと思うのですが。「自分から見てはっきりダメだという局面は、相手の方がそう思ってないということは相当ないはずなので、広瀬先生のリップサービスだと思います。」
対局中に感情を出してくれることは観る側としてはありがたいことですので、今後も続けていただけるとうれしいです。「そうなんですか(笑)」
先生は「盤上の物語の価値は不変」と語っておられます。同時に、詰将棋においても「ストーリーのある手順が好き」とおっしゃっていました。指し将棋における物語と詰将棋におけるストーリーにはつながっている部分がありますか?「指し将棋であれば対局者、詰将棋であれば作者になりますが、その人の意図が指し手や作意に反映されているのが好きということはあるかなと思います。」
後手番での対応は、相手の研究まで網羅しようと考えてはいない?「全部を定跡でカバーするというのは現実的ではないです。」

「今期の竜王戦の第3局で▲4五歩という仕掛け方を知らなくて、知らなかったと言うか気づかなくて見えなかったので苦しくなってしまいました。これも局面のポイントを押さえていないので気づかなかったということなので、そういう手筋を知っておくのは必要だと思います」

(「○○」を知らなかったとしても、「△△」を押さえておけば、そこから類推して考えることができたはずだ)

これまで詰将棋のような手が現れた対局はありますか?「(長考して)2021年の竜王戦第4局です」

「本譜は△3四桂に▲4七玉だったんですけど、▲3六玉とした変化で、以下△2四桂▲4五玉△4四歩▲同玉△3二歩▲4四歩△3三金▲4五玉△4四歩▲同銀△同金▲同玉△3三銀▲5五玉△8五竜で詰みます。本譜は▲4七玉△5八と▲3六玉となったんですが、先ほどと同じように進めると最後の△8五竜に対してと金が5八にいっているため▲6六玉と逃げられてしまいます。ただ、今回は竜の横利きが通ったので▲3六玉に△2五金からの詰みが生じています。これは詰将棋的な構造かなと思いました」

すらすらと当時の棋譜が口からでてくるのは凄い!

生まれ変わるとしたら何になりたいですか?「(少し考えて)うーん。人間になりたいです。自然界は競争が厳しいので生き残る自信がないです(笑)」
普段のネクタイ選びはご自分でされていますか?「ネクタイは基本的に母に選んでもらっています。一択ですけど自分が差し替えを要求することもできるので(笑)。でも基本的には選んでもらったものをつけています。」
いままでに一番悩んだ詰将棋はなんでしょうか。「結構諦めが早いタイプなので、悩んだ詰将棋は最終的に解いていないです(笑)。」「最近ですと岡村孝雄さんの都煙の『アツクナレ』を解いてみようと思ったんですけど挫折しました(笑)」
羽生九段との番勝負で将棋の内容以外のところで学ぶこともありましたか?「対局が終わった後すぐに羽生先生が気持ちを切り替えられていたのが印象的でした。インタビューの時にはもう切り替えが終わっているようでした。」

「あと、第1局の終局後のインタビューで持ち時間が8時間あっても足りないということをおっしゃられていて、やっぱり、そういう気持ちで考えないといけないんだなというところも勉強になりました。」

藤井七冠 令和5年度の成績

タイトル戦無敗を続けている藤井七冠。

王位防衛まであと2勝。8月4日の挑戦者決定戦で八冠目の王座挑戦者が決まる。

まとめ

matome
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  • 令和5年版将棋年鑑が刊行され、藤井聡太七冠に編集長がインタビュー。
  • 角換わり腰掛け銀の微妙な違いや実力不足の感覚などが語られた。
  • タイトル数やAI研究に対する考え方も明かされた。
  • 定跡作成の意味や対局中の表情、ネクタイの好みなどにも答えている。
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