将棋の棋譜は誰のものか...?

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棋譜利用に関する公開質問状と回答

2020年4月17日、日本将棋連盟は、棋譜利用に関する公開質問状に対する回答を連盟サイトに掲載しました。

公開質問状は、日本将棋連盟が2019年9月13日付で発出した「棋譜利用に関するお願い」に対応して出されたものです。

公開質問状を出した人:弁護士 杉村 達也氏

弁護士に依頼した人:すぎうら氏(将棋YouTuber)

公開質問状は弁護士を通して送付されており、依頼者は「将棋YouTuberすぎうら氏」です。



何を主張しているのか?

公開質問状では次の主張をしています。

「棋譜を利用してYouTubeコンテンツを作成したいのでガイドラインを作成して利用しやすいようにしてくれませんかね~」

「回答しないと提訴するぞ!」

日本将棋連盟は棋譜利用は許可制と周知しているのでそれを尊重するのが筋だと思いますが、すぎうら氏によると申請したら無視されたとのこと。

申請しなさいと言いながら、申請を無視をするのはどうかと思います。

(事実なら...)

<棋譜利用に関するお願い>

公益社団法人日本将棋連盟と各社が主催する棋戦で作られる棋譜は両者の共通の財産であり、棋譜の無断使用は両者の財産を損なう恐れがあります。

商業的目的に供する場合など、私的利用の範囲を超えて棋譜(図面を含む)を使用される場合は、事前に下記フォーマットへご連絡をお願いいたします。

今後も当連盟と各棋戦主催社では、棋譜の使用に関して引き続き協議して参ります。
日本将棋連盟

「棋譜」は誰のものか?

棋譜は対局者のものだと思っていたのですが、プロ棋士が自分の棋譜を自身のブログに掲載する時に制限が課されていることを知りました。

ということは、
棋譜は棋士のものではありません。

棋譜の力関係の序列。

主催者+日本将棋連盟 >プロ棋士 > 棋譜利用者

タイトル戦は、8大タイトルのうち7つは大手新聞社が主催者です。叡王戦のみドワンゴが主催者です。

スポンサー(主催者、協賛企業)が日本将棋連盟に資金提供を行い、その資金を日本将棋連盟と棋戦に参加した棋士で分配している構図です。

棋戦は棋譜が全てです。
棋譜がコンテンツです。

その棋譜をTVやネットメディアで流しています。

主催する新聞社は棋譜を自社の新聞に解説を加えて掲載しています。

TVに例えると

スポンサー > 電通 > TV局 > 制作会社 > 番組 > 出演者

著作権を主張できるのは、スポンサーとTV局です。

出演者は台本に従いパフォーマンスする役割なので、自身のパフォーマンスを商業登録していない限り権利を主張できません。

TV局 = 日本将棋連盟

出演者 = プロ棋士

の構図ではないかと思います。

TV番組をYouTubeにアップロードすると違法です。

radiko.jpは著作権者の理解が得られないことを理由に、録音機能が提供できないことを明らかにしています。

とすると、

「棋譜」を著作権のようなものと捉えることもできそうですね?

これがグレーなので、

日本将棋連盟が回答書を掲載することになったのだろうと思います。

NHK杯戦を見ながら棋譜をブログにアップすると、警告を受けるのか?

私的利用なので問題ないのか?

ブログにアドセンスを貼っていたら収益化しているので問題なのか?

悩ましいですね。

すぎうら氏の主張

すぎうら氏が公開質問状を出すに至った動機をYouTubeで語っていたので、文字起こししました。

出典:日本将棋連盟に対する考え方と、公開質問状の内容 - YouTube

  • 知人がプロ棋士になる、アマチュアで応援したい人がプロ棋戦に出るなど棋譜を使いたい場面が出てきた時に棋譜解説ができないのは悲しい
  • 無許可で棋譜を使用して収益を上げているチャンネルがある反面、連盟を尊重するチャンネルもあるため、まじめな人が損をしてそうでない人が得をする現状だ
  • YouTubeで儲けるのはかまわないが、棋譜利用はグレーなのでそれで儲けることはどうかと思う
  • 「棋譜利用のお願い」は申請しなくてもいいという考え方もできるので、無断で棋譜を使用しても問題ないとも捉えられる
  • 9月から複数回、棋譜利用の申請をしたがメール返信がなかった
  • 10月~11月、連盟やスポンサーにメールや電凸を数十回した
  • 連盟は後日返事をすると言ったが、1月末まで待ったがシカトされた
  • 読売新聞にメールを送ったが無視された
  • 王位戦に電凸したら迷惑がられて、こちらの方が悪いように言われた
  • 連盟やスポンサーの対応が悪く腹が立った
  • 住所、電話、メールアドレスを入力して質問しているのにメール完全無視は論外だ

質問状

質問部分を引用します。

質問状
令和2年3月2日
  1. 貴連盟及び各棋戦主催者が,主催棋戦の棋譜に関して持つとされる「共通の財産」と はいかなる法的権利に基づくものですか。
  2. 大多数の棋戦に関して棋譜の使用の許可・不許可に関する返答が全くない現状,及び棋譜使用について逐一申請をして許可を得なければならない手続的煩雑さ等を改善するため,貴連盟において各棋戦主催者と調整した上で,棋譜使用に関するガイドライン等を作成し,一定の条件を満たせば一律に棋譜の使用を許可するという運用を行う意 向はありますか。 また,もしそのような意向がある場合,いつまでに運用を開始するか,期限をご教示 ください。
  3. 仮に前⑵に関する意向がない場合,棋譜の使用に関して,今後どのように運用をして いくのか,具体的な見解をお聞かせください。
公開質問状20200301.pdf

日本将棋連盟の回答

出典:棋譜利用に関する公開質問状への回答|将棋ニュース|日本将棋連盟

日本将棋連盟
回答
 棋譜の著作権の有無に関しまして、様々な議論があることは承知しておりますが、日本将棋連盟と各棋戦共催社及び主催社(以下「主催社」)間では棋戦運営するにあたり、主に棋譜の優先掲載に関する契約を結んでおります。
 弊社団は日本の文化たる将棋の発展を目的としている団体であり、棋戦運営は事業の根幹を成すものです。棋戦を運営する前提として、弊社団及び主催社等には、棋譜の利用も含む営業上の利益を有しており、これは法的に保護される利益であると認識しております。
 棋戦の棋譜利用に関しましては、2019 年 9 月 13 日に弊社団Web サイトにてリリースしました「棋譜利用に関するお願い」以前より、弊社団及び主催社間にて協議を進めております。当協議において、棋譜利用に関するガイドライン作成の話も出ておりますが、棋戦ごとに契約内容が異なることから、各々調整が必要であり、まだ多くの時間を要しますことをご理解頂ければと存じます。
仮定の質問なので回答しないと思われる?

「おわりに」がホンネ

日本将棋連盟の公式回答は前項の通りです。

続いて、

「おわりに」が付記されており、たぶん、一番言いたい部分です。

棋譜利用で稼ぐつもりはないと言いつつ、「裁判を通じて再生回数を増やし、広告料で稼ぎたい」ことがバレています。

3. おわりに
 貴殿が運営されている YouTube チャンネルを拝見したところ、2020 年 3 月 22 日に投稿されました動画にて、「棋譜利用でお金を稼ぐつもりはなく、(本件に関する)裁判を通じて再生回数を増やし、広告料で稼ぎたい」といった趣旨のご発言がありました。
 棋譜利用に関しましては、弊社団にとって非常に大事なトピックであり、貴チャンネルの1コンテンツになることは将棋界発展の観点から適切ではありませんので、本質問状を回答するにあたり、このような公開という形を取らせて頂きました。

 今後も貴殿が将棋文化発展に寄与いただけることを祈念しております。
 また、引き続き将棋界へのご声援賜りますようお願い申し上げます。

新聞三社連合

すぎうら氏は自身のYouTubeにて、王位戦に電凸したことを明らかにしています。

王位戦の主催者は「新聞三社(連合)」です。

新聞三社連合とは、

中日新聞(東京新聞)、北海道新聞、西日本新聞の3社を指します。1950年(昭和25年)に設立されました。

タイトル戦 (2019~2020)


(2019年度 | 令和元年)
賞金:万円、竜王以外は推定値|2020/03/29
棋戦 期数 保持者 段位 対戦棋士 対局日 賞金 主催1 主催2
竜王 32期 豊島将之二冠 九段 広瀬章人竜王 2019/12/07 4,320 読売新聞
名人 77期 豊島将之二冠 九段 佐藤天彦九段 2019/05/17 2,000 毎日新聞 朝日新聞
叡王 4期 永瀬拓矢二冠 八段 高見泰地七段 2019/05/11 2,000 ドワンゴ
王位 60期 木村一基 九段 豊島将之名人 2019/09/26 1,000 新聞三社
王座 67期 永瀬拓矢二冠 八段 斎藤慎太郎七段 2019/10/01 800 日経新聞
棋王 45期 渡辺明三冠 九段 本田 奎五段 2020/03/17 600 共同通信
王将 69期 渡辺明三冠 九段 広瀬章人八段 2020/03/26 300 スポニチ 毎日新聞
棋聖 90期 渡辺明三冠 九段 豊島将之名人 2019/07/09 300 産経新聞

まとめ

すぎうら氏は炎上することでYouTubeの収益を確保することを期待していたようですが、日本将棋連盟から見透かされました。

但し、

「棋譜」の所有権の帰属についてはハッキリさせてほしいと思いました。

このブログでも棋譜を掲載したいと思うことがありますが、ややこしそうなのでしてません。

さて、

日本将棋連盟の主要な収入源はタイトル戦です。

タイトル戦は8つあります。

前項のタイトル戦の表では、主催1,2がメイン主催者です。加えて、協賛企業、特別協賛企業が資金を提供しています。

日本将棋連盟の運営が新聞社に牛耳られていることがわかります。

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